札幌高等裁判所 平成6年(う)147号 判決
1 所論は,被告人Hは,名義人Iの推定的承諾に基づいて口座開設の書類を作成したから,偽造の犯意はなく,違法性の認識もなかった,本件は世上一般に行われている借名口座であって,偽造の問題は生じない,借名口座について事後承諾を受け,または推定的承諾のある本件の場合,これが仮名口座となるものではない,などと主張する。
2 しかし,原判決が説示するとおり(※原判決の説示は,「本件文書の名義人は,被告人Hが申込書に記載した住所や生年月日,口座開設に当たって案内不要としたことなどからすると,架空人であるIであり,実在するIの借名口座ではないと認められ,名義人の承諾の問題は生じないと解される。」としている。),本件文書の名義人は架空人であるIであると認められるから,その承諾は問題とならない。
3 仮に,それが実在するIを名義人とするものであったとしても,本件偽造罪が成立することは,原判決が説示(※原判決は,「仮に名義人が実在するIであったとしても,被告人Hが本件口座を開設した時点において,実在するIが名義の使用を承諾していなかったことは証拠上明らかであり,将来の承諾が予想されたり,事後承諾を得たとしても文書偽造は成立すると解される。」と説示している。)とおりである。